2019年03月19日

『残業税 マルザの憂鬱』

先日刊行されました、『残業税 マルザの憂鬱』の紹介です。
おかげさまで、『残業税』シリーズも三作目になりました。

まずは簡単に、残業税の説明をしておきましょう。

残業税とは、正式名称を時間外労働税といい、残業や休日出勤に対してかかる税金です。
税率は基本が賃金の20%で、企業と労働者が折半して納めます。
どうして折半かと言いますと、建前としては、残業が労働者の意思によるケースもあり、残業を減らすには労働者の自主的な協力が不可欠であるからです。
本音としては、企業だけに課すと、まともに申告納税させるのがきわめて困難だからです。残業税の公正な賦課は、労働者を当事者の立場において協力させることで、はじめて成り立ちます。

残業税は累進課税制度をとっています。基本は20%ですが、段階的に増えていき、ひと月の残業時間が過労死ライン=80時間を超えると、80%になります。ここまでくると、残業しようさせようという気はほぼなくなるのではないでしょうか。

残業税の脱税を取り締まるのが、残業税調査官、通称マルザです。マルザは労働基準監督官とコンビを組んで活動し、脱税を取り締まります。彼らの仕事内容と活躍は、一作目の『残業税』でくわしく描かれています。


さて、本作です。今回は働く人の側にスポットライトを当ててみました。四話構成なのですが、介護職員、高校教師、大学教授、法律事務所職員がそれぞれメインになります。もちろん、砧、矢島、西川もちゃんと登場します。

実社会では、働き方改革がはじまっていますが、すぐにブラック企業撲滅、というわけにはいかないようです。外国人労働者の受け入れ、コンビニの24時間営業、教員の過剰労働など、問題は山積しています。本書はあくまでエンターテインメントですが、そういった問題を考える一助になれば幸いです。

既刊ともども、どうぞよろしくお願い申し上げます。

posted by 小前亮 at 13:43| Comment(0) | 作品紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月17日

『星の旅人 伊能忠敬と伝説の怪魚』

今回は便乗企画ではありません!

小峰書店より、新刊『星の旅人 伊能忠敬と伝説の怪魚』が発売されました。
没後200年を迎えた伊能忠敬の偉業を背景に語る、少年の冒険と成長の物語です。

「いくら手を伸ばしても、天の星にはとどかぬ。だが、頭で道理を考え、手足を動かして測量すれば、地を歩いていても星にとどくかもしれぬ。それが学問だ」

伊能忠敬は日本地図をつくった人として有名ですが、それだけではない、奥の深い人です。もとは婿入りした先で商売人として大成功を収め、村の顔役として尊敬されていた人でした。その彼が、隠居してから本格的に天文学を学びはじめ、ふとしたきっかけで蝦夷地に測量の旅に出ます。学問の才能はそれほどでもなかったようですが、豊富な資金と、まじめで粘り強い性格のおかげで、精密な地図ができあがりました。忠敬のつくった地図は高く評価され、やがて幕府の御用として、諸藩の協力を受けながら日本全国を測量して、日本地図作成に挑むことになります。

実は、もともと「金持ちの道楽」で天文学をやっていただけで(当代一の学者の弟子になっていますが)、最初から日本地図作成をめざしていたわけでも、高位の武士や学者だったわけではないのです。しかも、五十歳からのスタートで、大偉業を成し遂げています。それまでに事業で成功してますから、人生を二度生きたようなものです。

「金持ちの道楽」で大成功と言えばシュリーマンですが、現代でも、有り余るお金を手に入れて、宇宙や深海に乗り出す人たちがいます。そこから大発見が生まれるかもしれません。お金持ちにはどんどんお金を使ってほしいものです。

本書は物語の節ごとに解説が挿入されています。「佐原の発展と繁栄」「天動説と地動説」「忠敬と天明大飢饉」「大黒屋光太夫の冒険」など、当時の科学や文化についてのトピックスが、わかりやすくまとめられているのです。おもしろくて、ためになる。画期的な本になったと思います。作者の趣味が丸出しの解説ではありますが……。

売れ筋ではありませんが、携わる人みんなが力を入れてつくってくれた本です。多くの人に手にとっていただけることを願っています。

posted by 小前亮 at 17:11| Comment(2) | 作品紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月12日

『世界史をつくった最強の300人』文庫化

新刊の紹介です。星海社から刊行されていた『世界史をつくった最強の300人』が、縁あって光文社知恵の森文庫で文庫化されました。尽力していただいた関係者のみなさまに厚くお礼申し上げます。

親本の刊行は2011年です。計画停電のさなかに原稿を書いていたことが思い出されます。マサオさんのユーモアあふれるイラストが豊富につけられていて、価格以上に豪華な本でした。「試験には使えない」にもかかわらず、高校生のみなさんの反響が大きくて、嬉しいかぎりでした。

今回、本文イラストはありませんが、カヤヒロヤさんに軽やかでポップなカバーを描いていただきました。ありがとうございます。内容は変わっていませんが、いくつかミスの修正をしています。

あらためて読み直してみると、やっぱり人選にクセがありますね。どんだけビザンツ好きなの?とか、西ヨーロッパ薄いんじゃない?とか、ラジェンドラって名前だけで選んだだろ?とか……。あと、本書は人物事典ですが、その他の部分も気合いを入れて書いてます。巻末には歴史とのつきあい方についてまじめに語ってますし、世紀ごとの解説も、世界史の横のつながりを見るうえで役に立つでしょう。後者は世界史の勉強にも有用だと思います。この本を通じて、歴史好きが増えてくれたら幸いです。

最後に、ちょっと、いやかなりマニアックで、とりわけお気に入りの人物をあげておきます。

  シャープール二世「最年少皇帝」
  桓温「宣言どおりに悪名を残す」
  テオドラ「娼婦から皇后へ」
  プラケーシン二世「飲酒運転の象部隊」
  馮道「乱世の宰相」
  アンナ・コムネナ「ペンを持った皇女」
  シャジャル・アッ・ドゥッル「在位三ヵ月の女性スルタン」
  チャン・フンダオ「陳朝の誇り」
  ガジャ・マダ「名宰相と女王の仲は?」
  クリスティーナ「男装の女王」

どうぞよろしくお願い申し上げます。

posted by 小前亮 at 12:15| Comment(0) | 作品紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする